私の父は 職人 夕食の場で よく ちゃぶ台返し 茶碗投げ を 目にした でも 父は こどもたちには優しく 私は 叩かれた記憶がない その父は 自分は無学だから 息子は 大学に行かせる と いつも言っていた それだから 私は 言われずとも 勉強した そして 国立の大学に入った 親族に対しても 自慢の種 となり 私は 将来も嘱望されていた ところが で ある 私が 大学三年のとき 内ゲバで騒然の世の中 「二十歳の原点」という本が出た 高野悦子(大学三年の時に自殺した)さんの日記だ その前には 「人間失格」(太宰治著)など 数多くの本を 読んでいたので そのときから 私は 人生について疑問を持ち始めた 何で 死なないといけないの? 何のために 生きる? 人生は 虚無 なの? それで 私は 学業を放り出して 人生探求の 放浪を始めた 学業を放り出したものだから 親は 心配し 心配し 心配し しかし 成す術 がない 半年後 父は 倒れた 倒れたけれど 私は 父が倒れた 原因が 自分にあるとは さらさら 自覚していなかった その父は 必死に 私のことを理解し 寄り添おうとしていた そして 寄り添ってくれていた その父は もういない 倒れて 体が少し不自由になって 10年後 還暦を迎える前に 亡くなった 私の 責任である そして 今 私は その蒔いた種を 刈り取ろうとしているのだ ~ つづく