…ノアよ
わたしはいまあなたに告げる…
ノアは
目を閉じて
その声に心を向けた
一時の静寂ののち
神はノアにこう告げた
…近い将来
地上は大洪水に見舞われる
地に存在する命あるものは
みな死に絶えるであろう…
ノアは
息をのんだ
そしてノアは
それを
信じた
ノアは神にたずねた
それはいつ頃おきるのでしょうか
…いまから102年後である…
さらにノアはたずねた
主よ
そのときがくるまでに
わたしは何をすべきですか
わたしがなすべきことを
お伝えください
***
神はノアに
箱舟を造るように命ぜられた
***
ノアは主の命に応じ
箱舟の建造にとりかかった
通常 舟は川か海の近くに造るものである
舟が完成したらすぐに水に浮かべることができるし
移動も簡単だからだ
ところが
ノアは
水辺から遠く離れた場所に箱舟を造り始めた
これは常識では考えられない
狂っているとしか思えないことである
案の定
人々は
ノアを嘲笑し馬鹿にした
洪水が起きる?
地上が水に覆われるほどの?
そんな洪水は今まで見たことがない
しかしノアは人々に向かって
真剣に言った
神がわたしに告げてきたのだ
大洪水が必ず起きる と
それによって 地上で命の息のあるものは
みな死に絶えるであろうと
だから 人の命を守るために 箱舟を造れと
そんなノアに ある人が言った
それで 山に舟を造れってか?
その言葉に そこに集まった人々は一斉に笑った
ノアは 人々からあざけられ
白い目で見られるようになってしまった
※古川健治氏著「天啓 創世記物語Ⅱ ノア篇」より引用