20240122

善と悪のコスモロジー(6)

…ノアよ
わたしはいまあなたに告げる…

ノアは
目を閉じて
その声に心を向けた

一時の静寂ののち
神はノアにこう告げた

…近い将来
地上は大洪水に見舞われる
地に存在する命あるものは
みな死に絶えるであろう…

ノアは
息をのんだ

そしてノアは
それを
信じた

ノアは神にたずねた

それはいつ頃おきるのでしょうか

…いまから102年後である…

さらにノアはたずねた

主よ
そのときがくるまでに
わたしは何をすべきですか
わたしがなすべきことを
お伝えください

***

神はノアに

箱舟を造るように命ぜられた

***

ノアは主の命に応じ
箱舟の建造にとりかかった

通常 舟は川か海の近くに造るものである
舟が完成したらすぐに水に浮かべることができるし
移動も簡単だからだ

ところが
ノアは
水辺から遠く離れた場所に箱舟を造り始めた

これは常識では考えられない
狂っているとしか思えないことである

案の定
人々は
ノアを嘲笑し馬鹿にした

洪水が起きる?
地上が水に覆われるほどの?
そんな洪水は今まで見たことがない

しかしノアは人々に向かって
真剣に言った

神がわたしに告げてきたのだ
大洪水が必ず起きる と
それによって 地上で命の息のあるものは
みな死に絶えるであろうと
だから 人の命を守るために 箱舟を造れと

そんなノアに ある人が言った

それで 山に舟を造れってか?

その言葉に そこに集まった人々は一斉に笑った

ノアは 人々からあざけられ
白い目で見られるようになってしまった

※古川健治氏著「天啓 創世記物語Ⅱ ノア篇」より引用