20241204

出てきた言葉は『ありがとう』でした

結婚したての、まだ何も知らなかったあの頃。
私は夫への不満を募らせていた。1日一緒にいてもほとんど喋らず、どこかに出かけようと誘ってもくれない。私は数ヶ月に一度は、不満が溜まり彼にぶつけていた。
「なんでそんな態度なの」「どうしてやってくれないの」と泣きながらぶつけた。

こんなはずでは…と後悔する日もあった。
それでも私は家事を一生懸命やった。ちょっとの不満も我慢した。
私だって笑顔の妻でいたい。癒しの妻でありたい。
いつか変わってくれることを信じてひたすら彼に尽くした。

でも、3年経っても変わらなかった。私は夫婦生活に限界を感じていた。
不満が溜まり爆発しそうになったある日。
私の中に怒りと悲しみが混在して、涙となって溢れてきた。
なんとかこの気持ちを伝えなきゃ。
そう思い、夫の前で、言葉を選んで不満や苦しみを伝えようとした。
それが言葉となろうとした時、何故か、私の口からポロリと出た言葉は、

「ありがとう」だった。

思いとは全く逆の言葉が出たことに自分で驚いた。
戸惑いながらも、私はこう続けた。

「いつも一生懸命働いてくれてありがとう」
「文句も言わずご飯を食べてくれてありがとう」
「こんな私と一緒にいてくれてありがとう」と。

泣いてそう言いながら、
私は理解した。

そうか、夫は愛情表現をしていたのに、それに気付いていなかったのは、私の方だったのかもしれない。何故だかよくわからないが、
その時募っていた不満がスーッと溶けて無くなっていくのを感じた。

その日を境に私の中で何かが変わった。

今まで目についていた夫の行動が、実は何も悪気がないことが分かった。
むしろ不器用な夫にとって十分なくらい、何かをしようとしていたことに気付いた。

私は期待や要求ばかり考えていたのかもしれない。
見返りを求めて尽くしていたのかもしれない。
夫を変えようと思っていたのかもしれない。
夫は夫なりに頑張っていたのに、その愛を受け取っていなかったのは私だったんだ。

それからというもの、私は夫のそうした愛情表現を逃すまいと、
何かにつけて
「ありがとう」と言うよう​にした。

ドレッシングを取ってくれてありがとう。
加湿器の水を補充してくれてありがとう。
買い出しに付き合ってくれてありがとう。

「ありがとう」と言えば、それが当たり前でない事が身に染みて分かった。

驚いたことに、夫も「ありがとう」をたくさん言ってくれるようになった。

お互いの心は満たされ、互いに感謝するようになり、
笑顔で幸せな家族になった。

愛情を受け取ること、いや、相手の愛情を見つけ出すことは、とても大切なことだ。
家族は毎日同じ日の繰り返しだからこそ、一つ一つの言葉や行動から、愛情を見つけ出し、幸せを噛み締めていきたい。

私たちはこれからも、何千回も何万回も
「ありがとう」と言うに違いない。

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