空気が ひんやり 感じられる 快晴の 早い朝 歩く歩道の 左側を 中は閑散とした 10両編成 の 電車が 私の行く方向とは 反対に 通り過ぎていく ここは 継母も 見たであろう 風景 だ 私たちは 導かれて この近くに 住むようになったのだ 駅へ 向かって歩きながら 心の内に 湧き出るように 声が 聞こえてくる 「つぎは 私のことも 書いてね」 妻の 継母の 声だ ・・・ 妻の 継母 が亡くなったあと 私は 夢を 見た ヨーロッパの 修道院 そこを訪ねていた そして 私は テーブルの上の 修道女の名前が一覧となった本を 何気なく 手に 取り ページをめくった そして そこに 私は 継母の写真と 名前を見つけた のだ ・・・ 継母は 4人姉妹の 末っ子だった 資産家の娘で お嬢様育ち だった しかし 継母は 型にはまらない 女性だった ホテルの支配人をした こともある とにかく 活動的でやり手 で 近代的な 女性だった ・・・ 父親の勧めた 縁組みで 高貴な雰囲気の漂う人と 結婚した 軍の士気高揚映画 に 出演したことも ある方 らしい 本人も 嬉しそうで まんざらでもなかったようである ・・・ しかし すぐに 亡くなった 飼っていた犬が 慰め となった ・・・ その後 継母は 亡くなった夫の兄弟の 娘を 養女 にした 養女の父は 戦死していたのだ ・・・ 継母は 喫茶店 を経営した 米軍関係者が たくさん訪れ 大繁盛した 「モカ」 というお店 だ 米軍関係者の家族とも 仲良くなって よく 宿舎を行き来した ・・・ が あるとき 病気で 危篤 となった もうだめか・・ と 継母の 実家は 養女への相続回避のために 養子縁組を 解消した 資産を 養女に渡したくなかったのだ ・・・ 継母は 危篤の中で 夢を見ていた 向こう岸に咲く 美しい花々 そこに流れる 浅い川 そこを渡ろうとしたとき 「こっちに 来るんじゃない!!」 継母の祖母 が出てきて すごい形相をして 叫んだ そして 目覚めて 意識を回復した ・・・ 目覚めたら 詳しい事情も 聞かされないまま 養女は いなくなっており 行き先 もわからない ひとりぼっちに なってしまっていた ・・・ そんな中 出会ったのが 妻の 父 である 妻の父は 実業家であった 不動産会社を経営し 同業者との交流も 盛んに行っていた そして 容姿は 継母が 大好きな 父 に 似ていた 確かに 写真を並べてみると よく似ている それが きっかけだったのは 確かなようだ ・・・ 継母の父は 子供がいる男のところに 入ることには 反対だったようだ しかし 最終的に 許し 財産を持たせた 一方 継母の母は 最期まで反対だった それで 以後 父親が 亡くなってからは ますます 実家とは 疎遠になっていった ・・・ つづく